Sleep symptoms

夜間の睡眠症状

不眠症とは

不眠症とは、寝つきの悪さ(入眠障害)や起床時間前に目覚めてしまい、その後眠れなくなる早朝覚醒、眠りが浅く目覚めることが多い中途覚醒などの総称です。

このため睡眠の質が低下して日中のだるさや食欲不振、意欲や集中力の減退などが起きます。眠れない日は誰にもありますが、多くは自然に解消します。しかし、不眠が解消しない場合、治療が必要な可能性があります。当院では状況に応じた治療を行っていますので、不眠でお悩みであれば、まずは一度ご相談ください。

慢性不眠障害の診断基準(ICSD-3)

慢性不眠障害の診断基準(ICSD-3)を示した図。主な診断項目や基準がまとめられている。
※クリックもしくはタップで拡大できます。

眠りのメカニズム(レム睡眠とノンレム睡眠)

健康な状態であれば、日中の疲労を解消するための睡眠欲求と、体内時計による覚醒力のバランスによって、寝る時間と起きる時間がある程度一定し睡眠リズムが生まれます。また、眠っている状態にもレム睡眠とノンレム睡眠があり、睡眠直後の眠りは深く、起床時間に向かって浅くなっていきます。このサイクルが適切であれば、身体や脳が適切に休めるため、疲労回復が可能です。

レム睡眠のメカニズムを示した図。夢を見る睡眠段階であり、脳が活動している睡眠である。
ノンレム睡眠のメカニズムを示した図。脳の代謝活動が覚醒時と比べ、最大40%まで低下し、脳を休める睡眠である。

不眠症の原因

加齢やストレス・運動不足

不眠症の要因は多数ありますが、精神的なストレスや運動不足、加齢などが代表的です。「明日は大事な仕事があるから眠らないとまずい」といった緊張で眠れないこともあるので、就寝前にリラックスすることも重要です。
また、金銭や人間関係などで大きな不安があると不眠に繋がりやすいので、問題解消が健康につながることもあります。

生活習慣病

糖尿病や高血圧などの疾患も不眠症の要因となり得ます。糖尿病があると、高血糖に起因する頻尿が睡眠障害に繋がります。また、高血圧の方は交感神経が優位になりがちなため、自然な眠りを得にくい場合があります。

不眠症のタイプ

不眠症は「なかなか眠れない疾患」と思われがちですが、睡眠中に何度も目が覚める中途覚醒や、起床時間より早く起きてそのあと眠れなくなる早朝覚醒も含まれます。
次のように、3つのタイプに分類されます。

入眠障害

就寝しようとしてもなかなか眠れず、熟睡した気がしない。

中途覚醒

睡眠中に何度も目が覚めてしまい、その後眠れない。

早朝覚醒

早朝に目覚める(加齢や軽度うつに起因する場合もある)。

生活習慣病と不眠症

近年の研究で、生活習慣病と不眠症には密接な関係があることがわかってきました。

たとえば糖尿病がある場合、頻尿や多飲のほか、神経障害による痛みやしびれから睡眠に支障が出やすくなります。
また、血圧が高い状態が続くと交感神経が優位になって心身が興奮状態になるため、やはり睡眠をさまたげます。さらに、メタボリックシンドロームや肥満があると、不眠症とは異なりますが睡眠時無呼吸症候群のリスクが上がります。

その一方で、不眠症の治療を行うと糖尿病や高血圧の治療をしやすくなることも分かっています。これは、睡眠が充実することで自律神経のバランスが良くなり、ストレスホルモンが減ることによるとされています。

不眠症の治療

不眠症の治療は、非薬物療法と薬物療法に二分されます。
不眠症と診断しても、必ずしもお薬を処方するわけではありません。不眠症の治療で目指すのは、薬剤などに頼ることなく自然な睡眠を適切に得ることだからです。
しかし、薬物療法がすべて悪いわけではありませんし、状況によっては早期にお薬を処方した方が良いと判断する症例もあります。そのため、当院は状況や治療方針を丁寧に説明し、患者さんの理解を得てから治療を始めます。患者さんの側でも疑問があればお気軽にお尋ねください。

不眠症の治療アルゴリズム

不眠症の治療アルゴリズムを示すフローチャート。診断から始まり、薬物療法と認知行動療法の選択、治療効果の評価までの流れを図解している。

高齢者の不眠症に対する睡眠衛生指導のポイントや治療

01眠くなってから寝床へいく

02眠れないときは寝室から出る

眠りたくても眠れないときは思い切って布団や寝室から出てリラックスしましょう。

03寝室では寝ること以外のことはしない

スマホや読書は寝室以外で行い、眠気が出てから寝室に向かいましょう。

04昼寝は短めに

長すぎる昼寝は不眠を悪化させます。昼寝は15時までに、20分程度にしましょう。

05寝る前に入浴や運動でからだをあたためる

06お酒を睡眠薬代わりにしない

寝つきはよくなっても、睡眠の質が悪くなり、トイレの回数も増えるため「寝るためのお酒」はやめましょう。

07寝る前にカフェインを控える

08寝る前に心身の緊張をゆるめる

生活習慣の改善

不眠症は生活習慣を改善することで症状が軽くなる場合があります。

  • 定期的な運動
  • 寝室環境
  • 睡眠時間
  • 規則正しい食生活
  • 就寝前の水分
  • カフェイン
  • 就寝前の飲酒
  • 就寝前の喫煙
  • 起床時刻の固定化

薬物療法

不眠症の治療でお薬を処方することはありますが、薬剤の効果に頼らず十分な睡眠を取れる状態を目指すことが重要です。そのため、お薬を処方されていても、生活習慣の改善は続けてください。
また、睡眠薬の使用を最小限に抑える意識をもつことも健康的な暮らしを目指すうえでは欠かせません。いずれは睡眠薬を遠ざけ、自然で心地よい睡眠がとれるように、当院と一緒に取り組んでいきましょう。

むずむず脚症候群(レストレスレッグス症候群)とは

むずむず脚症候群はレストレスレッグス症候群とも言われており、横になったときや座っているときに、主として脚部に、痛みやむずむず感、かゆみなどの不快な症状が出る疾患の総称です。「主として脚部」と書いたのは、手や腕、背中や腰などに症状が出ることもあるからです。
むずむず脚症候群は夕方以降に症状が出やすいので、睡眠に悪影響を与えるケースも少なからず見られます。また、デスクワークなどに従事する人は仕事自体に大きなダメージが及ぶこともあります。さらに、日中の疲労感を伴うことも知られています。

むずむず脚症候群の症状

  • 脚の不快な感覚のため脚を動かしたくてたまらなくなる
  • 安静にして、横になったり座ったりしていると症状があらわれる、または強くなる
  • 脚を動かすと、不快な感覚が軽くなる
  • 夕方から夜にかけて症状が強くなる

むずむず脚症候群の原因

むずむず脚症候群は、原因を特定できない一次性(特発性)のものと、疾患に起因する二次性のものに大別されます。
脳内の鉄の欠乏と動態の異常からドパミン作動性神経の異常等を引き起こしていると考えられていますが、まだ明確にはされていません。
また、比較的女性に多いことも分かっています。

一次性(特発性)

むずむず脚症候群は遺伝的要因によるケースが多いこと、全体の8割程度が特発性に該当することなどが知られる疾患です。家族に同様の症状が見られる例は5~9割にも上りますし、原因と考えられる遺伝子変異も発見されています。また、遺伝的要因が6割を占めるという報告もあります。

二次性

二次性のむずむず脚症候群は、葉酸やビタミンBなど特定の栄養が不足していることや、鉄分の欠乏からくるドパミン合成や代謝障害(鉄欠乏症貧血)、妊娠や生理、パーキンソン病や糖尿病、うつ病や腎不全、関節リウマチや甲状腺機能異常などに起因すると考えられています。
そのほかにも薬物が原因となることもあり、抗ヒスタミン薬や抗うつ薬、抗精神薬などから起こるケースも見られます。さらに、アルコールやニコチン、カフェインなどの身近な物質に起因する例も報告されています。

むずむず脚症候群と
合併しやすい病気

むずむず脚症候群がある方の70%程度に、合併症として周期性四肢運動障害が起こるとされています。また、むずむず脚症候群は循環器系の疾患や高血圧の要因となるため、これらの疾患を併発することもあります。

むずむず脚症候群の治療

むずむず脚症候群の治療では、「レストレスレッグス症候群治療ガイドライン」に沿って投薬などを行います。また、鉄分の不足によって起こる場合もあるため、鉄分を多く含む食事を取ることや、アルコールやカフェイン、ニコチンなどの摂取を控えるなど日常の注意もアドバイスします。

生活習慣の改善

生活習慣を見直すことにより、症状の改善が期待できます。

  • カフェインやアルコール、喫煙を避ける
  • 鉄分を補充し、バランスのよい食事
  • ストレッチやマッサージを習慣にする
  • 夜間の過度な運動を避ける

薬物療法

むずむず脚症候群に対して薬物療法を行う場合、ドパミンの作用を抑制する薬剤や、神経痛の治療薬を処方します。鉄欠乏の場合は鉄の補給、また、並行して生活習慣の改善を行うことも重要です。

睡眠時無呼吸症候群とは

睡眠時無呼吸症候群は、名称の通り睡眠時に呼吸が止まる疾患の総称です。診断を行う場合、眠っているときに10秒以上の呼吸停止が1時間に5回以上起こることが条件とされています。
眠っているときに呼吸停止が何度も起こるため睡眠の質が下がり、起きて活動しているときに激しい眠気やだるさに襲われ、仕事や家事などに支障をきたすこともあります。さらに、呼吸停止による血中酸素濃度の低下から、脳や心臓などの重要な部位への酸素供給量も下がります。その結果、心筋梗塞や脳卒中などの重篤な疾患のリスクが高まるのも睡眠時無呼吸症候群の弊害です。また睡眠時無呼吸症候群があると、高血圧や糖尿病などへの悪影響も懸念されます。

睡眠時無呼吸症候群の患者は日本に500万人程度存在すると予想されていますが、治療に繋がっているのは1割程度です。治療を受ければ早い段階で改善できる例も多いので、気になる点があればまずはお気軽にご相談ください。

睡眠時無呼吸症候群の症状

  • 日中の眠気
  • 周囲からいびきがうるさいと指摘される
  • 睡眠中に何度も目が覚める
  • 朝起きた時に頭痛やだるさを感じる
  • 呼吸が苦しくなる夢を何度も見る

睡眠時無呼吸症候群の原因

睡眠時無呼吸症候群には、脳から発せられるべき呼吸の信号が滞ることによって起きる中枢性睡眠時無呼吸症候群と、上気道(空気が通るルート)が閉塞して起こる閉塞性睡眠時無呼吸症候群があります。

閉塞性睡眠時無呼吸症候群の主な原因

顎が小さい場合や肥満がある場合などは気道の閉塞が起こりやすいですし、舌根沈下や飲酒も要因となります。また、鼻炎で花が詰まりやすい場合や睡眠薬を使っている場合もリスクが上がります。小児であれば扁桃肥大やアデノイドも要因となり得ます。

中枢性無呼吸症候群の主な原因

脳疾患や心疾患に関連して起こる例がありますが、どのような原因で発症するのかは明確ではありません。

睡眠時無呼吸症候群が
もたらす影響

睡眠時無呼吸症候群があると日常生活に支障をきたしやすいうえに、合併疾患も懸念されます。

日常生活

眠りの質が低下するので、起きて活動しているときに集中力の低下やだるさを感じやすくなります。そのため仕事や家事のパフォーマンスが低下し、失敗の可能性も上がります。
また日中に眠気に襲われるため、仕事中に眠ってしまうなどして信頼を失ったり、上司に叱責されたりすることも考えられます。
さらに、眠気が強いため車の運転や機械の操作などで大きな危険を伴います。実際に睡眠時無呼吸症候群がある人が交通事故の原因となった例も存在します。ほかにも、不眠やうつ、勃起障害などが睡眠時無呼吸症候群に関連して起こると報告されています。

合併疾患

睡眠時無呼吸症候群がある人は、そうでない人に比べて脳疾患や心臓疾患のリスクが高いと報告されています。また、睡眠時無呼吸症候群は不整脈や高血圧の要因になる事や、糖尿病を重症化させることなども報告されています。

睡眠時無呼吸症候群は血管や心臓に関連する疾患や、代謝の不具合に関連すると考えられています。また心臓疾患などで突然死する可能性も上がるため、放置せず早めに治療につながることをおすすめします。

睡眠時無呼吸症候群の治療

睡眠時無呼吸症候群の治療方法は複数存在しています。肥満傾向がある人は減量に取り組むことが有効ですし、CPAPという機材を使用する治療の有効性はデータで立証されています。

CPAP(シーパップ)

CPAP(シーパップ)は日本語で経鼻式持続的陽圧呼吸法と呼ばれます。空気を送り込む機能があるマスクを鼻に装着して就寝することで、睡眠中に無呼吸になることを防ぎます。治療開始時にはマスク自体やマスクを固定するバンドの違和感で「眠れない」と言われる方もいらっしゃいますが、多くの人が少しずつ慣れます。
この治療によって日中に眠くなることが減り、死亡率の軽減効果もあることがわかっています。

晩酌や入眠前の飲酒の中止

飲酒後に就寝すると、粘膜部に浮腫が発生するためいびきをかく比率が増えることがわかっています。また、晩酌や寝酒の習慣をやめることで、就寝中の呼吸停止が減ることも明確です。

口腔内装置

口腔内にマウスピースを入れることにより、睡眠時の気道を確保します。ます、睡眠時無呼吸症候群の診断を行い、歯科医に紹介の上作成していただきます。

レム睡眠行動障害とは

レム睡眠行動障害があると、眠っているときに見ている夢の内容に合わせた行動をとってしまいます。たとえば大声で寝言を発したり、手足を大きく動かしたりすることもあるので、自分自身や家族がけがをしてしまうこともあります。また、起きた後に夢をしっかり思い出せることや、周囲の人の声かけで簡単に目が覚めることなどの特徴があります。
通常であればレム睡眠中は神経調節によって筋肉が弛緩するので、夢の内容に合わせて身体が動くことはありません。一方レム睡眠行動障害があると、筋肉を弛緩させる作用が起こりにくくなるため、夢の中の行動が実際の身体にも表れてしまうのです。

レム睡眠行動障害は、比較的50歳以上の男性に多いことがわかっています。人口の0.5%に認めると考えられます(Nomura 2015)。また、多系統萎縮症やパーキンソン病、レビー小体型認知症などの神経疾患との関係性が指摘されていますし、抗うつ剤が関係していることもあります。

レム睡眠行動障害の症状

  • 寝言が激しい場合によっては叫ぶ
  • 手足を激しく動かしている
  • 起き上がって歩き出す
  • 隣で寝ている人を殴る
  • 怖い夢や悪夢を見る

レム睡眠行動障害の原因

睡眠中はレム睡眠とノンレム睡眠を1セットとするサイクルが90分程度の周期で繰り返されます。一般的に、夢を見ているときには筋肉は弛緩しているので、夢の中で身体を動かしていても実際に手足が動くことはありません。
レム睡眠行動障害があると、筋肉の緊張を調整する脳細胞に変性が起き、夢の中の動作が実際の身体に反映されます。また、レム睡眠行動障害は、レビー小体型認知症やパーキンソン病に先行する疾患であることも知られています。

中枢神経の疾患や薬の影響による二次性

レム睡眠行動障害の4割程度は、睡眠不足や飲酒、抗うつ剤の影響や頭部への外傷、脳炎や髄膜炎等の炎症性疾患などから二次的に発症します。また関連する基礎疾患として、レビー小体型認知症やパーキンソン病、脳血管性疾患や脳幹部の腫瘍、虚血性脳血管障害や多系統萎縮症、くも膜下出血や多発性硬化症などの神経変性疾患などがあります。
さらに、レム睡眠行動障害はレビー小体型認知症やパーキンソン病の初期症状であることがわかってきたため、これらの疾患を診断する際の要素にもなっています。

原発性

レム睡眠行動障害の6割程度は原因が特定できない原発性に分類されます。発症の経緯として、「錐体路」と呼ばれる神経の経路の作用が効かなくなって起こるとされています。

レム睡眠行動障害の治療

レム睡眠行動障害は、薬物治療で症状が改善されることがわかっています。お困りの方は是非ご来院下さい。

寝酒の禁止

飲酒の影響がある状態で眠ると覚醒しやすいことが知られていますし、レム睡眠とノンレム睡眠の規則性も崩れがちです。そのため、レム睡眠行動障害による異常行動のリスクも上がります。
眠るために飲酒する人もいますが、ぜひ医療機関にご相談いただき、飲酒に頼らない自然な入眠を目指しましょう。当院でも不眠の原因を踏まえた対処を行っています。

薬物療法

レム睡眠行動障害に薬物療法を行う場合、抗てんかん薬の一種であるクロナゼパム(ベンゾジアゼピン系)が有効です。ただし、ふらつきや転倒、日中の眠気などの副作用があるので、適用できない場合もあります。
また、メラトニン系の睡眠薬や三環系抗うつ薬のほか、漢方薬のひとつである抑肝散を処方する場合もあります。

夜間頻尿とは

夜間頻尿とは、就寝中に排尿目的で1回以上起きる症状を指します。日本では40歳以上の約4,500万人に見られ、年齢が上がるとともに排尿の頻度が上がります。夜間に排尿で起きる回数が多いと、睡眠の質が低下しますし、慢性的な睡眠不足になります。そのため家事や仕事などのパフォーマンスも下がりますし、日中に眠気が起こりやすいので、さまざまな点で支障が出ます。
前立腺肥大の影響と混同されがちで、男性に多いという誤解もありますが、女性にも見られるので性別に関係なくご注意ください。

夜間頻尿の症状

  • 就寝後に1回以上排尿のために起きる
  • 夜間の排尿によって睡眠不足になっている

夜間頻尿の原因

夜間頻尿の原因は、尿量の増加による多尿や夜間多尿、膀胱容量の減少による1回の尿量の低下、睡眠障害の3種類に大別されます。

多尿・夜間多尿

尿の量が多いことで夜間頻尿になるケースです。下記に示すように原因は多数あります。
また、内科的な疾患がある場合はその治療を優先することもありますので、治療中の疾患があれば必ず申し出てください。

①多尿
尿の量が多い場合、就寝後にも尿意を感じやすく起きる回数も増えます。具体的には、1日の総尿量を体重で割った値が40ml超(体重が60kgの人なら1日の総尿量が2,400ml超の場合)であれば多尿と判定します。ただし疾患の治療で尿量を意図的に増やしている場合もあるのでご注意ください。

②夜間多尿
夜間の尿量が増える状態です。心不全やホルモンバランスの乱れ、高血圧や腎機能障害、睡眠時無呼吸症候群などの疾患に由来する場合もありますが、薬剤の影響による場合や、就寝前に水分を摂取し過ぎることから起こる場合もあります。数値的には、65歳以上であれば1日の尿の総量に対して夜間の尿量が1/3を超える場合は夜間頻尿と診断します。

膀胱容量の減少

膀胱の容量が減ると尿をためることができる量も減るため、昼夜を問わず排尿の回数が増えます。

①過活動膀胱
尿が膀胱にたまった量がわずかであっても尿意を感じたり、膀胱の収縮が起きたりする疾患です。尿意切迫感(急激に我慢できないほどの尿意を感じること)があることもこの状態の特徴です。パーキンソン病や脳卒中などの脳疾患のほか、脊髄関係の疾患からくる場合があります。

②前立腺肥大症
前立腺が肥大することからくる男性特有の症状で、排尿のしにくさや膀胱が過敏になることもあります。

③その他
骨盤臓器脱や間質性膀胱炎に起因する夜間頻尿もあります。

睡眠障害

睡眠障害は年齢が高い方に多く見られる要因で、眠りが浅いことから目が覚めやすい状態が続きます。問診でも尿意で目覚めるのか、目覚めるから尿意を感じるのかわからない人も少なくありません。また、加齢の影響以外では、むずむず脚症候群や睡眠時無呼吸症候群のほか、不眠症やうつ病などの精神的疾患が関係するケースもあります。

夜間頻尿の治療

夜間頻尿は原因ごとに治療方法が異なるため、まずは原因を知ることが大切です。また、複数の要因がある場合、改善しやすいところから取り組むために排尿日誌をつけるよう指導しています。

飲水指導(飲水制限)

夜間頻尿が水分の過剰摂取から来ていると判断した場合、水分を取る量や接種時間に配慮することで状態の改善が見込めます。そのため、水分摂取についての指導を行います。

食事指導

塩分の摂取量と尿量や排尿の回数には明らかな関係性がありますし、特に夜間頻尿にその関係性が表れやすいことも分かっています。そのため、当院では塩分接種の指導も行っています。
また、お茶やコーヒー、紅茶などに含まれるカフェインも利尿作用がありますから夜間頻尿に影響を及ぼします。さらに飲酒もホルモン分泌に影響して尿量を増やすので、アルコールを控えることもプラスになります。食事指導では上記の知見を総合的に用いて状態の改善を目指します。

行動療法

日中に取った水分は重力で脚部にたまりますが、人体は余った水分を尿として排出しようとするため、夜間頻尿につながります。これを防ぐために、行動療法(四肢の動作や散歩、昼寝など)の指導を行っています。

薬物療法

膀胱の過活動が要因である場合や、前立腺肥大から夜間頻尿が来ている場合、内服薬を処方することがあります。また、睡眠障害が原因であれば睡眠薬の処方も有効です。薬剤の作用で尿意を減らすことも可能ですが、それよりは飲水指導や食事指導を優先します。

当院の取組み

夜間の睡眠障害は問診の上で、原因を検索していきます。

不眠の診断フローチャート

睡眠症状の診断と治療の流れを示す図表。症状の種類や原因、治療方法が体系的にまとめられている。

夜間の睡眠障害は問診の上で、原因を検索していきます。
まずは、生活習慣、身体疾患、薬剤の状況を確認します。夜間の頻回な排尿も不眠の原因になります。原因がある場合にはその対応を行います。
頻回な中途覚醒が睡眠時無呼吸症候群の可能性もあるため、いびきの有無、呼吸停止の指摘も確認が必要です。まず、簡易型ポリソムノグラフィーを装着していただき、呼吸状態、酸素飽和度より診断を行います。 さらに検討が必要な場合には、脳波を含めたポリソムノグラフィーを自宅で検査してもらい診断します。

それぞれの病態に応じた薬剤を使用して効果を確認します。確認の上で患者さんそれぞれあった薬剤の調整を行っていきます。

各症状と診断方法

睡眠時無呼吸症候群の場合には、重症度に合わせて持続陽圧呼吸療法(CPAP)か口腔内装置、生活指導を行います。

入眠障害の場合には、寝付く場合に足を中心にした異常感覚の確認が大事です。この衝動的な感覚が、運動により軽快し安静にて増悪する場合にはレストレスレッグス症候群の可能性があります。
また、下肢が不随意に動いて眠れない、目が覚める場合には周期性四肢運動の可能性も考えられます。この場合にはガイドラインに準じて内服薬を使用します。
若年層を中心に、夜遅くまで入眠できず、起床困難を呈する場合には睡眠相後退症候群を考慮してリズム調整を行います。

中途覚醒、早朝覚醒が多い場合にはうつ病の可能性があり、早期の場合には対応を行います。重度の場合には、心療内科に紹介させていただきます。
高齢者を中心に、早朝覚醒が問題になることもあります。この場合にもリズム調整を行います。
これらを除外した上で、睡眠障害のある場合には、不眠症として対応します。睡眠環境を調整したうえで、入眠障害、中途覚醒、早朝覚醒に応じて、オレキシン拮抗薬、メラトニン作動薬、非ベンゾジアゼピン系睡眠薬、ベンゾジアゼピン系睡眠薬で調整を行います。

特異な睡眠障害として、夢内容で行動化してしまうレム睡眠行動障害を考慮する場合には、ビデオを貸し出しの上で脳波を含めたポリソムノグラフィーで自宅で検査を行います。解析の上で治療を考慮します。この病態の場合は、パーキンソン病、レビー小体型認知症等への進展が報告されているので、予測因子として、自律神経、嗅覚、色覚、認知機能等を評価の上で、対応しています。