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α-synuleinopathyにおけるRBDの意義(睡眠学会)

シンポジウム『REM睡眠行動障害の実態と予後について』で発表しました。

レム睡眠行動障害(RBD)は神経変性疾患への移行が高いと考えられています。RBDの患者さんの病理検討では多系統萎縮症(MSA)、レビー小体型認知症(DLB)、パーキンソン病(PD)のsynucleinopathyの病理診断の頻度が高くなっていました。MSAのRBDの特徴はMSA発症前後でRBD症状が出ることが多く、その後は症状としては消失する傾向にありました。その後の予後には声帯外転筋麻痺より睡眠時無呼吸症候群への対応が重要となります。MSA合併RBDは特発性RBDと比較して起立試験の拡張期血圧が有意に低下しており、MIBG心筋シンチの低下がないのが特徴でした。

 

DLBは診断基準が改定され、RBDが中核症状となり、睡眠ポリグラフ検査で筋活動低下を伴わないレム睡眠が指標的バイオマーカーに入りましたが、DLBの経過でもRBDは発症前より起こっていることが多いようです。PDにおけるRBDは意外に発症前だけでなく、発症後に起こることが多く、RBD合併例では認知症に進展するリスクが高くなります。RBD先行例とRBD後発例を比較してみると、RBD後発例の方が認知機能悪化が強かった。このように、認知症のリスクにRBDがなりそうですが、RBDに70歳以上、男性、転倒やすくみ、両側発症、起立性低血圧、軽度認知機能障害、幻視があるとより認知症へ進展するリスクが増します。このように、MSA、DLB、PD等への進展注意が注目されるRBDですが、進展因子を調べた報告があります。進展20年以上前より嗅覚障害が起こっており、その後色覚障害、便秘等の自律神経障害、認知機能障害、運動障害と起こってきます。MSAでは若年で、排尿障害、DLBでは色覚障害、認知機能障害、PDではPD発症2年前に急激に運動症状が悪化するようです。これらを踏まえると、それぞれに関連ある症状が徐々に出現し。若年で嗅覚障害軽度でMIBG心筋シンチ正常、起立性低血圧、排尿障害等出現してくるとMSAの可能性があり、MSA発症後にはSAS管理が大事となる。嗅覚障害、MIBG心筋シンチ低下、色覚障害、認知機能障害等出現してくれば、DLBの可能性があり、DLB発症後には運動機能の悪化?に注意が必要かもしれません。嗅覚障害、MIBG心筋シンチ低下、急速な運動機能悪化があれば、PDの可能性を考え、PD発症後には認知機能障害悪化に注意が必要です。少数の自験例で薬剤での進展リスクを検討したものでは明らかな効果は得られませんでした。今後は進行予測因子確定、進行予防の確立が期待される状況です。

帝京大学笹井妙子先生より地域高齢者のRBD有病率が1.23%であり、病院受診例より嗅覚機能、認知機能が良好であることを示してもらいました。

獨協医科大学宮本雅之先生より日本人のRBDから神経疾患進展率を示してもらい、PD例の方がDLB例より発症年齢が低いことを示してもらいました。

名古屋大学岩本邦弘先生より偶発的なRWA症例でも7.3%がRBDに発症し、嗅覚障害、便秘等の異常があり、うつ病、抗うつ薬使用が多いことも押してもらいました。

滋賀医大松尾雅博先生よりRBDでの認知機能低下を捉えるのに、MMSE、MoCA-Jでは捉えにくく、BACS-Jの有用性を示してもらいました。

RBDでも一時的な例や軽快例があるのも経験しており、病態的な考え方、今後の課題も議論して有意義でした。